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暁の契りと桃色の在り処 ー音ー

第5章 ちゃんとした姫


『佐助!』

家康が佐助くんを呼び止めた。
佐助くんは、天井裏から頭の半分だけ覗かせた。

『信長様が広間で待ってる。政宗さんの浸けた梅干しと一緒に。』

「わぁ、すごい!」

『ばれてましたか。』

『気配消してないでしょ?』

『確かに。では…』

スタッ。

また颯爽と着地をした。

『休憩の茶と茶菓子はないからね。』

『信長様にご挨拶して、梅干し受け取ったら帰ります。』

『当たり前。、行くよ!』

「あ、うん。咲もいいよね?」

『だって、あんたの母上なんでしょ?』

「聞いてたの?」

『聞こえたの。』

咲は、顔を赤らめて俯いていた。
私は咲の手を取り歩き出した。

『さん、家康公に呼び捨てされたよ。』

「あ、…うん。良かったね!」

『うん。泣きそうだよ。』

ふふっ。私が笑うと家康が振り返る。

『早く来い、佐助!』

「やった! 二回目~。」

『昇天しちゃう。』

『いいから!』

家康の天の邪鬼な優しい悪戯に、私はまた笑ってしまった。





信長様に頭を下げて、私の見舞いで越後の薬茶を届けたと話した佐助くんは、政宗の浸けた梅干しを片手に颯爽と帰って行った。

「軍議、一段落ですか?」

『あぁ。それに皆が貴様に会いたそうっであったからな。』

そう信長様が言うと、私の手を取って上座の隣に座らせてくれた。
秀吉さんが、優雅にお茶をたて始めると政宗が茶菓子を配り始めた。

『今日は、葛で枇杷を固めてみた。枇杷は甘く煮たんだ。』

「美味しそうだし、綺麗。」

『の事を考えて作った。
びた、み、んからーだったか?元気の出る色なんだろ? 枇杷の橙色も元気の出る色なんじゃないかってな。』

「ビタミンカラー、誰から聞いたの?」

『俺だ。ほら、前に呉服屋で話しただろ?』

「秀吉さん! あぁ、覚えててくれたんだね!」

『このような色で元気が出るなら安いものだな。』

「もぉ、料理は目から!ですよ、光秀さん。」

『いいこと言うじゃねぇか、。』

『料理は目から、ですか。視覚から攻めると言うのは戦にも通用しますね。さすが、様は信長様の正室になられる御方です』

『茶菓子で、戦まで考えるって、あんたなんなの?』







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