第4章 典医と友人の見立て
それから咲は、世継ぎを期待する声に対する責務や、懐妊の噂と月のさわり、先程の家臣との一件を、武将達全員に話した。
にもたれ掛かりながら、時折信長が囁く言葉に頷いたり赤らめたりしながらその場を見つめていた。
咲が話終わると、秀吉が悲しそうにに、低い声で、話しかけた。
『、すまなかった。噂も知ってたが其処までお前に影響するとは思わなかったんだ。もっと気を回せば良かったな。』
「ありがとう、秀吉さん。ちゃんと聞こえる。大丈夫。もう、信長様やみんなが揃って安心したし。」
『いつ、聞こえは戻るんだ? うまい飯を食えば良くなるか?』
『薬は無いのか?』
『政宗さん、光秀さん。実は俺もあんまりこの類いは詳しくないんです。どうしたら…』
家康は、ふぅ、と溜め息をついてを見た。
『…ストレス性突発性難聴。』
佐助がぼそりと呟く声に、家康は振り返った。
『なに、それ?』
『話を聞いていて、思い当たる節がありました。俺達の世である病です。』
『すと、…?』
『三成公、ストレス、です。わかりやすく言えば重責が重なることで気が落ちること。』
『世継ぎ、か。』
『そうです。光秀公。それにより過度に精神が不安定になり、突発性、つまり突然難聴になる。
これには、目眩や耳鳴りも症状として出ます。』
『治療は? 薬はないの?』
『俺は医学に精通はしてないのではっきりとは言えませんが…。ストレス、重責によるものなら、心を落ち着けてゆっくりさせるのが一番かと。』
『じゃあ、俺の出番だな!』
にやりと笑う政宗は、に向かって低い声で話始めた。
『うまい飯や甘味、沢山作ってやるよ。遠乗りも城下も連れていってやる。大丈夫だ。』
それを聞いたは、信長を見上げた。
信長もまた頷いて、の頭を撫でた。
『俺は、気を落ち着かせる薬湯作るよ。あと、わさびに会いに行こう。』
『なにか書物を読んで差し上げましょう。』
『政務は俺と三成、光秀で代われるものは代わる。御館様と過ごするようにする。
…、堺の視察はどうしますか?』
皆が優しくを包み込むように声をかけたあと、秀吉は信長に問うた。