第3章 繁栄と幸せの狭間
『の体調も落ち着いている。まずは軍議だ。』
信長の一声で、久しぶりに集まった面々は広間に向かう。
『、軍議が終われば昼の膳を囲む。夜は宴だ。それまで休め。』
『、軍議が終わったら診察するよ。待ってて。』
『甘味、持ってきたぞ。家康の診察の後、茶を飲もう。』
家康と政宗は、そう言うとゆっくりと広間に入っていった。
もまた、久しぶりに自室へ向かった。
時折挨拶を交わす家臣や女中達の一瞬見せる寂しそうな顔が、言葉ではでないものの【月のものが来たせい】だろうとは考えていた。
足早に自室へ入り襖を閉める。
(やっぱり、天守に行けば良かったかな。)
は、ゆっくりと座り込み息を吐いた。
パタパタ。
此方に近づいてくる足音がする。
(お咲かな? 家康?)
は、襖の方に向き直し足音を待った。
すると、話し声が聞こえてきた。
『奥方は今どちらに?』
『様に、何か?』
『いや、懐妊の噂は真ではなかったようだからな。
是非、側室をと信長様にお話ししようと思ってな。』
『それを、なぜこのような場で、様に聞こえるようにお話になるのですか?』
『聞こえるように、とは些か語弊があるが…。奥方様にも織田家の繁栄を考えていただきたい。
側女中の女中頭のそなたからも進言していただきたい。』
『私が、様にそのような畏れ多い事!』
『親しげに茶屋に行くではないか。』
『私は、お世話をさせて頂く身です。ご夫婦の事までなど畏れ多いこと!』
『…黙って聞いていれば。重臣の我の話を聞かぬと申すか!』
穏やかに話していた重臣は、徐々に表情を返え怒りが見えた。着物が擦れるような、ヒュッと音がする。
『おやめください!』
重臣は、咲に向かい手を振り上げた。