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暁の契りと桃色の在り処 ー音ー

第3章 繁栄と幸せの狭間


『寒くはないか?』

「はい、大丈夫です。」

『此処は誰も来ない。俺と貴様だけの場所だ。安心して眠れ。』

「…信長様。」

『なんだ?』

「…やっぱりなんでもありません。」

『嘘をつけ。なんだ?言え。』

「口づけを…。おやすみの口づけをして、欲しいです。」

『ふっ。全く貴様は…。』

信長は、の前髪をすくと、ちゅっと音を立てて口づけた。

『今宵はこれまでだ。我慢が出来なくなるからな。
俺は、書をしたためる。先に休め。』

「はい、おやすみなさい。」

信長は、の頭を撫で、もう一度額に口づけた。
言葉を交わさずとも視線で愛を伝え合う。

の瞼はゆっくりと閉じれ、規則的な寝息が響く。信長は、優しく微笑むと立ち上がり、文机に向かったのだった。





翌日は、晴天で涼しげに風が髪を遊ぶような心地の良い陽気だった。
は、信長の隣に。
その回りを囲むように秀吉、光秀、三成が並び、これから到着する家康を城門で待ち構えていた。

『、大丈夫か?』

「うん、今日は楽。」

『昨日ぐっすり眠れたからか?』

『こやつは、俺の寝る場所もないほどの寝相であった。』

「の、信長様! もぉ!」

『ぐっすり眠れたなら良かった。』

『おや、秀吉。信長様の寝場所を取るなど、と叱らないのか?』

『の体調も大切だからな。』

『姑には頭が上がらない。』

『御館様!申し訳ありません!』

『…、皆様、見えましたよ!』

三成が指を指す方向には黄色の装束が見えた。

「いえやすー! って、あれ?」

『あいつ…、明日じゃなかったか?』

『仲良く一緒に登城か。』

『ふっ、出迎えが一度で済んだな。』

「まさむね!」

『また、城が賑やかになりますね。』

家康の真後ろから、青い装束の政宗が見えた。

『あいつ、単騎だな。』

『また、家臣を置いてきたのか。…家臣も大変だな。』

蹄の音が目の前で止まる。

『お久しぶりです。』

『お元気そうで。』

『家康、政宗。よく参った。大義である。入れ。』

『はっ。』

信長は、にやりと笑うと踵を返し城へ戻る。

『、元気そうだね。』

『また、可愛がってやるからな。』

二人を迎え、安土の武将達は城へ向かい歩き出した。






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