第3章 繁栄と幸せの狭間
『まぁ、様。よい知らせですね!』
「うん、そうだね。家康が来てくれたら体調も安心出来るし、政宗のご飯も楽しみ。城下に一緒に行ったり、ワサビや照月と遊びたいなぁ。」
秀吉は、先程泣き腫らしたであろう目元を見つめながら微笑んだ。
『あぁ、行ってこい。御館様もお許しになるだろう。』
『さぁ、そうなれば、様!
お早くお休みなさいませ。』
『そうだぞ。あ、。天守で眠るように、と仰っていたぞ。』
『秀吉様、様は…』
「お咲、大丈夫。秀吉さん。私、月のものが来たの。だから、天守には行けないよ。」
『すまない、さっき立ち聞きした。』
「えっ…」
『御館様にも報告した。だが、それでも天守にと。の寝床は天守だと。』
「…信長様。」
『さぁ、行け。』
「うん。」
の目元はうっすらと涙の膜が出来、瞬きと合わせれば、すっと一滴流れ落ちた。
は、にこりと笑うとゆっくり立ち上がり天守に向かうのだった。
※
天守では、文をしたためる信長の側で光秀が報告をしていた。
『西の緒大名の集まりを、毛利は静観しつつあるようです。』
『やはりか。』
『確たる将がいないため、纏めるにも難があるのかと。』
『牽制のための出陣で良かろう。』
『よい武器を見つけられれば、尚宜しいかと。』
『あぁ。家康と政宗も此方に着く頃だ。改めて軍義しようぞ。』
『はっ。』
『。入れ。』
「ご存知だったのですか?」
『お前の腑抜けた気配など、誰でもわかる。』
「光秀さん!」
信長は、ふっと笑うと立ち上がりを迎え入れた。抱き着くように寄り添うの頭に口づけをすると、信長は手を引き褥に向かう。
『今宵は、まだ政務がある。側にいる。ゆっくり休め。』
「何も聞かないんですね…」
の一言に、光秀と信長は目を合わせ笑いだした。
『案ずるな。貴様の事ならすべて承知だ。閨での情事も全て、な。』
『さすが、我が主君。さて、私はここまで。』
光秀は、静かに頭を下げるとに向かい
『おやすみ』と囁くと天守を出ていった。