第5章 ※これは、一応ホストの話である(?)
「し..知りたい...です..っ!」
私は真面目にお客様を見返した。
気になるけど、考えないようにしていたら、ーー忘れていた事だった。彼女、彼女だったらーー、真実を知って私まで伝えてくれるかもしれない。
「約束ですよっ♪と、いっても。」
と、ここで、お客様は、くるっと回ってお辞儀をした。月が、私たち2人のシルエットを黒くする。私1人だけ驚き、その汗までシルエットで見えそう。お客様なのに、彼女の方が私の従者みたいに、お辞儀は丁寧だった。
「まだまだ調査中なんですけどねー。だから、あなた様とくくさんの愛の愛のお話と引き換えに、私が調べた事をお伝えさせてください!」
「おっ..お願いします!」
と、思わず彼女の手を握ってしまった。
「っ!」
「あっスミマセッ..お客様?」
と、お客様?の部分だけ精一杯にカッコつけて前髪をかきあげてみたら、一瞬、ポカンとお客様はして、
「はいっ♪」
と満面の笑みで笑い、そして次の瞬間には、姿をくらませていた。
「ーーーーえ?」
次の一瞬、屋根の上をトンテンカンテン走ってゆく、そんな人影が見えたような気がしてーーー
「えっ???」
夜風がびゅうっとなる。
耳が千切れそうになる。
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はぁっ....。
埃まみれ。酒まみれ。唾液まみれ。体液だらけ。
床は、茶色い木の板だ。
それを認識した途端、ゾッと寒気がした。鳥肌が全身中に散りばめられる。
『おい』
悪魔が笑う。
ーーー自分はこいつの気配にはとてもめざとく、鋭い。だから寒気が立ったのだ、と冷静に分析している間もなく、前髪をグッと引き上げられる。
頭皮が焼けるように痛いはずなのに、もう、何も感じない。埃まみれの空気の中で、その黒い影はささやく。
『買ってこいや、酒。』
垣間見える歯は刃のようにとがっていて、まさか噛みちぎられる訳もないのに、その歯に恐怖してしまう自分は何故なのか。口から白い瘴気のようなものが吐き出される。
『っ...。』
上手く、返事を返せなかった。
無言で、フラリと立ち上がり、ドッと流れる冷や汗を感じながら前へ、前へと進む。
生きろ。
生きろ。
正気などなってはいけない。じゃなきゃ、自分は、壊レーーーーーーーーーーーーーーーー