第5章 ※これは、一応ホストの話である(?)
「それとーーーー」
と、いつの間に私の背中に回り込み、おくちを耳に近づけたお客様は、密やかに呟く。
「ここのお屋敷、何か匂いませんか....?」
「えっ..」
後ろを振り返ったけど、彼女はもういない。また振り返って前を見ると、目の前にニコッと笑った彼女がいる。思わずヒッとなる。なんだか...失礼かもしれないけど、キツネのような笑顔に見えてしまった。
な..なに..??なんだろうっ..?
「××年×月×日、貴方のお婆さまは5人の男の人に招集をかけた。」
「!それってーーー隼人さん達の事..」
「あれっ?"翔さん"の本名言っちゃって良かったんですか?」
!!!
ばばばっ!と手で口を押さえる。ーー"翔さん"は、隼人さんの源氏名だ。
な、ななな、なーーー
マズイ!!本名バレッ!!!!私ったらんモウ!!
「翔さんこと、隼人ーサンだけ、イレギュラーな入り方してたんですよね。それも貴方のお婆さまが勘ちがーーー」
んー、と、とがらせたおくちに人差し指をのせる彼女。「ちょっ..!ちょっと待ってくださいッッ..!!!!!」
「え?」
ショートカットでおかっぱ風味な、まんまるな目が私を見つめる。な、なんでこのお方、ひっ、日付とかバッチリ記憶しててーーーー
「なんでそんな事知ってるのか、ですって?ーーーんー、ごめんなさい。正体をあんまり明かしちゃいけない類の人生歩んでますので。」
と、ショートカットの彼女はペロリと舌を出す。だけど、そんなにお茶目な感じじゃなくって、真顔に近い顔で。
なっ..ななっ..
何者なの、このお客様ぁぁーーーーーっ??
彼女はオシャレな前髪を揺らし、ニヒル、でもキュートに目玉を左に動かした。
「気になりませんか?貴方も。何故、貴方のお婆さまか、若くて素敵な男性方を用意して、このホストを開業したのかっ!あたしなら、その情報をつかむ事ができますよー」
と、急にまた明るいテンションで話し出すのだった。
たしかにーー
初日、思ったことだった。確かになぜ、うちのおばあちゃんは急にこんな事し始めたのか。..お金儲けのため?
でもだったら、別の方法を取るはずだ。
「あ..」
...嗚呼、理科子ちゃんだったら、会ったばかりの人を信用するなって、そう言うんだろうな..
一瞬他人事のように思いつつ、でも私は口を開く。