第5章 ※これは、一応ホストの話である(?)
「あっ..」
去ろうとする葉太郎くんを目で引き留めた。葉太郎くんは私の目に引っ張られた磁石のように、動きを止めた。なぜかちょっと、空間の中の糸に操られたみたいな動き。
「あ、いやっ..なんでもないの!でもなんで葉太郎くんは休んじゃうのかな?って..」
ハッと、私はまた自分の口を押さえた。
バカ!!何が"なんでもないの"だよしらっじらしい女ァはァン!!?!!???今自分で何か..デリケートな理由あるからって一旦私、気を遣っておいてっ..くっ..すまねぇけど、慣れねぇ事は、するもんじゃ、ね..
「お、オイ山田ッッ!?」
ってまっしろになりかけてたところ、葉太郎くん様が気を遣ってクダサッタ!!!!うれじ!!!ってもっと反省せな!!あたす!!いやふざけんな私!!!!!!!!!!!
と、ぐるぐる半目めだまに涙流し、ゴッガッゴッ血を吐きながらと頭の周りに星を回していたら
「あんまり、心配すんじゃなぇぞッ!オレは大丈夫だからッッ!!今度こそじゃッ!!」
あ、行っちゃった..。葉太郎くん、ヘコヘコって感じに体を上下させて投げるように小走りしていってしまった。
なんか、まだ心配する仲じゃないと言ったものの、..やっぱりちょっと気になってしまうのは人情だろう。なんだろう、この、嫌な胸騒ぎ..
「葉太郎くんっ!!」「!」
一度呼び止めてしまったものはしょうがない、私は必死の様子で彼につかみかかった。
「お縄にかかりにいくんじゃないよね?」
「違ぇよッッ!!!!?」
ふと、ホストは18歳未満、高校生禁止的な記事のことを思い出してしまったのだ。その事は案の定言えず、葉太郎くんはさっさとどこかへ行っちゃった。
日差しが少し熱い。
「ねぇくく...」
カーテンがふわり、と僕らを包み込む。神や仏からも隠し、外界から完全に2人を消してゆく。いや、ーーこれは僕の内たる願望に過ぎない。
僕はくくの、長くて大きい肉体を、まるごと抱き締めていた。
気付かなかったけど、くくも僕にしがみついていた。くくの赤い体は、鞭の跡を無数も残している。だけど、それが嘘かのように、少し夕焼けがかった日差しとカーテンは、僕達にとても甘い。
「...大丈夫?」
「 ううん、ーーー..僕が絶対、くくを守るから 」