第1章 Another Story
『だい、じょうぶ?』
ずるずると崩れ落ちる俺に合わせて膝を折ると、彼女は俺の額にそっとそのキレイな冷たい指先を伸ばす。
『ごめんなさい……』
痛みも。
この貧血も。
不思議と恐怖へと変換される事なんてなくて。
変わりにずっとずっと思っていた。
『チャンスだ』、って。
それ以外にこの状況を見る要素なんて微塵もなかったんだよ。
ほんとに。
だから。
『ねぇ』
額に触れる彼女の掌を取り上げて。
『秘密にするから俺と付き合ってよ』
驚く彼女の掌へと、口付けた。
『彼女になって?』