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ラブヴァンプ-Another Story-

第1章 Another Story


ゴクン、て。
彼女の喉が鳴った、瞬間。


凛は傷口へと吸い付いた。



『………っ』



一滴も溢す事なくそれを舐めとると。
いつの間にか傷口は跡形もなく塞がっていた。
それすらも惜しむように、右手に舌を這わせている凛の、表情が。
仕草が。
その、恍惚な表情が。
あまりにもキレイで。
思わず見惚れてしまったんだ。





『……もっと、あげようか?』
『ぇ』




おとぎ話だと、思っていた。
画面や本の中だけの、生き物だと。



『あげるよ』


制服のネクタイを外し、ついでにボタンをふたつみっつ、外す。
制服を引っ張り、首筋を露出させれば。
また、彼女の表情が、変わった。






確信は。
あったから。
右手の傷が塞がらなくても。
血液に吸い付くあの、仕草だけで。
違う。
変わった目の色を、見たあの瞬間から。
たぶん確信していた。




『……』
『俺なら大丈夫だよ、怖くない』



息を飲む彼女を視線に捉えた瞬間。


『………っっ』




肌を突き破って鋭く堅いものが肌へと食い込む。
噛みちぎられたかと思うほどの、激痛。
そのあとは。
血液が自分の体から流れ出る、感覚。
飲まれて、る。
聴覚からも、液体を啜る、貪る効果音。
五感全てが。
研ぎ澄まされたように鋭くなっていく。
躍動感。
全身のアドレナリンが放出される。
喉が熱い。
体が、熱い。





気付けば。




体は教室の壁の支えがないと立っていられなくて。
足に力が入らない。
呼吸が、荒い。
そう、気付いた時には。
首筋に突き刺さっていた牙はその存在を隠し、変わりに彼女の舌先が首筋へと触れていた。


『ごめんなさい……』



彼女が体を解放した時には。
カッコ悪いけどその場に立っていることさえ難しかった。
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