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ラブヴァンプ-Another Story-

第1章 Another Story


「そんなに、美味しい?」



前に凛が、言ってた。
どうやら人間の血液にも種類があって。
もちろん吸血する側の趣向もあるけど、甘く濃厚な血液を持つ人間はヴァンパイアに好かれる、とか。
たいてい出血した時でないと食欲はそそられないが、それらは通りすがりにも軽い匂いがある、とか。
その中でも稀に極上の血液を持つ人間がいて。
その血液は匂いだけで他のヴァンパイアを呼び寄せる。
近付きすぎるとまるで酔うように、全身の血液が逆上せるのだとか。



「………おい、しい」



その血液は、あまりの美味しさに中毒性をもたらす場合も、ある。


「じゃぁ今度は、凛をちょーだい?」



自分がその、稀な血液だと知ったのは。
凛に出会ってから。
初めて凛を見た日、凛としたその佇まいに、回りを圧倒させるその容貌に。
目を惹かれた。
同じ学校だとは言っても科が違えば接点などなく。
ただすれ違い様に彼女の後ろ姿を追うだけ、だった。



だけど。





ある、夏の午後。
サッカーボールがガラスを突き破って彼女へと飛んできた時。
彼女は受け身をとるわけでもなく、ただその場に立ち止まるだけで。
考えるよりも先に体が動いてた。
彼女に覆い被さるように右手で受け身をとり、ガラスの破片で右手を切った。
幸い回りに生徒もなく、彼女に怪我はなかった。
すぐに部員のひとりが謝りに来たけど。
その間も、彼女の視線は俺へと釘付け、だった。


出血してる、右手に。



『……?』


そのうち苦しそうに呼吸が乱れて。
俺の視線に気付くと彼女はすぐに走り去って行った。
なぜだかわからないけど。
今追いかけないと駄目な気がして、すぐに後を追い、走り去る彼女の右手を、とれば。


『……はな、れて』


か細く呟く声が聞こえて。


『お願い……』


思わずそのまま、引き寄せた。


途端。


『ぇ……』


彼女の姿に、息を飲んだ。
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