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ラブヴァンプ-Another Story-

第1章 Another Story




「素直じゃないなぁ、凛ちゃんは」
「このくらい、平気……っ」
「でもさっきから呼吸荒いよ?気付いてる?」
「ぇ」





トン、て。
凛の頭上の壁に腕ごと付けば、すっぽりと凛は、俺の影の中。


「ちょっと、翔琉……っ」


スルリとネクタイを緩めて、凛へと顔を寄せる。


「いいよ、咬んで」
「………っ」


凛の目前には、咬みやすい首筋が晒されたことになり。
一瞬息を飲んだ凛の気配がした。



「………ごめん、翔琉」



そ、と。
遠慮がちに肌へと触れる凛の指先。
冷たい温度の心地よさに酔いしれる前に。


カプ


と。



凛の牙が皮膚へと喰い込んだ。



「………っ」



ジュル 



ゆっくりと、血液を吸い込む凛の動きに迷いが徐々に消えて。


ゴクン  ジュル  ジュルル 


貪るように、血液が凛の体へと流れていく。





謝る必要なんてないのに。
凛のためならこの体、いくらだって差し出す覚悟は出来てる。



遠慮がちに触れるだけだった凛の両手は俺の首へと回り、きつく引き寄せる様に力強いものに変わっていた。



「………はぁ」



首から顔を離した凛の口元に付く少量の血液。
まだ見え隠れする凛の牙。
真っ赤に紅潮した肌に、潤いを帯びた瞳。
血液の余韻に浸る凛は、他のどの生物よりもキレイだ。


「治った?怪我」
「………だい、じょうぶ。翔琉は?」
「俺はなんともないよ」
「………ごめん」


いつも凛は、咬んだあとは申し訳なさそうに俺から瞳を反らす。
全然、申し訳なくなんかないのに。



「凛ちゃんはもうちょっと命大事にしてね?」
「気を、つけます」
「ん」


チュ、て。
軽く唇に自分のそれを重ねれば、それは血の味がして。
だけど不思議と嫌悪感など芽生えなかった。





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