第6章 コワイヒト
-----------------------
-----------
空は既に見事に茜色に染まり、神流は黄金と竜胆と共にビルの上に立っていた。
あれから夜卜は雪音のとこに行くと言い去って行った。
黄昏は昼と夜の境目。
映世のものは闇を畏れ身をひそめ、常世のものは闇にまぎれて跋扈する。
「お譲…」
暮れの日は全てを赤に染め上げあやふやにし、宵の影は寄り深く濃いものとなる。
この時分狭間にいる者たちは境界を超えやすい。
かつての人はその時間を魔物と会うとき、大禍時と言った。
------------------
「…毘沙門ってあの毘沙門天のこと?!」
「ひより!」
黄金はひよりの隣に降り立ち、神流の切羽詰まった表情がひよりの目に見て取れた。
「神流さん!」
「見つかったか…怪我はない?」
「大丈夫です。でも夜卜が!」
「竜胆、任せてもいい?」
「お安いご用!」
空高く飛び上がり、茜色に消えていく銀虎。ひよりは立ちあがると竜胆の消えて行った方角と神流を交互に見た。
「毘沙門は危険だ。ひよりは他人のふりをしていた方がいい。夜卜は任せて、行くよ黄金。」
神流は黄金に飛び乗ると、一瞬の風を残して気が付けばひよりだけがそこにのこっていた。