第6章 コワイヒト
「うん。二人の板挟みはきついしね。」
微笑みながら言えば、ひよりの顔に見る見るうちに笑顔が広がった。それなら、とひよ里は立ち上がり、雪音を探しに行くと石段を下りて行った。
その背中を見送りながら神流は目をそらさずに呼びかける。
「下りてくれば?」
がさがさと木の葉が小さく揺れ、姿を現したのは夜卜。バツが悪そうに目を逸らしながらこちらへ向かってくる。
「お前なぁ。なんてこと言ってくれるんだよ。さんざ、俺と雪音の問題だなんて言っときながら最終的には手を出すんじゃねぇか。」
「だって、三角関係って辛いじゃん。」
ため息をつきながらうなじをさする夜卜を横目に見ながら、神流は内心焦っていた。こんな時に会ってしまったら大惨事になりかねない。
ふと、足に重みを感じて下を向くと夜卜が頭を横たえ眠っていた。夜卜の目を覆うようにそっと手を置き、ただ通り過ぎるだけの時間に身をゆだねた。