第6章 コワイヒト
とある神社の境内の中、妖の寄りつけない聖域の中、ひよりの目には長い髪を風になびかせて佇んでいる神流の姿が、いつにもまして神々しく見えた。
「それで、夜卜の何を聴きたいの?」
「あ、えと…」
改めて聞かれるとひよりは困ったことに口を噤んだ。
夜卜のこと、雪音のこと、そして野良という神器のこと。
どれから話していいのかわからずに黙っていると、それを汲んだかのように神流の方から口を開いた。
「私も、実を言うと夜卜のことをよく知っているわけではない。それをいうなら、天神の方がよく知っている。」
「でも、お二人はいつも一緒に…」
「一緒にいるだけで、互いをよく知っているとは限らないでしょう。」
そこで会話が途切れた。
「…雪音君のこと、なんですけど…」
やっと出たのはその話題で、一番知っておきたいことだった。神流は手招きをし、ひよりは軽く頷くといわれるがままに腰をおろした。
「あれは、主である夜卜と雪音の問題。解決するのもあの二人であって、私たちが出来ることはない。ただ、いざというときは裁きを下すだけなんだ。」
「夜卜が言ったんです。いつか、雪音君にも私にも神の裁きを下すって…」
「…その通り、だと思うよ。ひよりって、夜卜に依頼を頼んでるんだっけ?」
「はい。体が落ちやすい体質になっちゃってそれを治してもらいたくて。でも、ちっとも助けてくれそうにないです…」
「私も武神であるからそう言う依頼はあまり受けたことはないけど、夜卜を働かせることはできるよ。夜卜と雪音の仲を早く解決させたいって願うなら、それなりの事はして見る。」
「本当ですか?」