第5章 境界線
妖の叫び声が耳に五月蠅く響く中、不安そうに下を見ている神流にひよりがそっと声をかけた。
「その怪我…早く手当てしないと!」
「ひよりさん。それは私達がやりますので、お気になさらず。」
ひよりが声のした方を振り返ると、深緋と黄金、竜胆がそこにいた。神流も彼らに気付くと、悲しげな顔を見せるのであった。
「あの子…雪音君が心配してたあの子、助けられますよね?」
その問いに、深緋がしっかりと首を横に振る。
「妖に触れ堕ちた魂が行きつくのは、朱にまみれた生き地獄でしかありません。すでに妖に取り込まれてしまった今、私達が出来る最大のことは、あの妖を斬り解放してあげること。それしか、道はないのです。」
「そんな…だけど!」
「嬢ちゃん。これは、誰が決めることでもない。この世の理。堕ちたものは苦しみ、我々は斬ることでそれを助ける救世主となる。神の力を持ってでも変えられぬことだってあるのさ。」
竜胆のゆったりとした声が優しく厳しく、そして冷淡にひよりに説明する。その間に、夜卜は見事妖を倒したのであった。