第5章 境界線
先日と同じようにケータイが軽い音を立てて鳴り、神流が出ると今度は落ち着いてはいるものの怒気を含んだような声が聞こえた。
「雪音、そっちにいってないか?」
「来てないけど。」
「そうか…」
「いなくなちゃったの?探そうか。」
「あぁ、頼むわ。ただし、見かけても何も言うな。アイツが自分で帰ってくるまで、俺は待つ。それと…あいつは、闇を怖がっている。」
一方的に切れた通話に画面を睨みつける神流だが、左耳に軽く手を触れ息を吸い込んだ。その耳には十字の形をしたピアスが控え目に光っている。
「茜。」
「はい。雪音様の位置を探知いたしました。」