第2章 雪のような
しばらくいくと、妖の気配を濃く感じ黄金に乗ったまま、屋根の上に風を感じる。耳元で茜の声がなる。
「お嬢様。鼠の方角21地点より妖が近づいてきます。」
「遠いな。…お?」
ふと、反対の方に目を向けると神流は目を細めた。
「見つけた。…男の子、十代そこそこ…」
遠目では見えないくらいに小さな雪と見間違うような光の固まり。神器となりえる、死霊。神流は走り出すと、ポストの斜めに位置する屋根の上まで走った。
指で刀を作り、その死霊に向けようとすると同じく指で刀を作り今まさに神器を得ようとしている物がいた。
「還る場もなく逝く事もままならないお前に
留まる場を与える
我が名は夜ト 諱を握りてここに留めん
仮名を以て我が僕とす
名は訓いて器は音に
我が命にて神器となさん
名は雪、器は雪
来い 雪器!」
「あれは…?!」
夜卜が神器に名を与え呼ぶと、その光は濃くなり、夜卜の手に収まった。現れたのはむき出しの刃に白い布を巻きつけた、白く輝く刀。