第5章 境界線
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夜卜は雪音を廊下へと引きずり出し、静かにドアを閉めた。
月明かりに照らされる廊下にいたのは、夜卜と神流。二人は多少は違いはあれど少しばかり厳しい視線を雪音に向ける。
「おまっ、何でここに?!」
「何でじゃねぇよこのエロがき!お前何しようとした。」
「ちがっ、あれはひよりが呼んだから!」
「けっ、お前に女は速ぇっつんだよ。今は俺様だけにしとけ。」
「何キモいこといってんだジャージ野郎。お前だっているじゃん!俺と同じ神器の子!俺がいなくたって…」
雪音が言ったのは野良のことだと二人はすぐに理解した。
神流の言葉は雪音の言葉を考えを貫くように低く小さく耳に届いた。
「雪音。その言葉、私の神器達に向かって同じことが言えるか…」
しかし雪音は震えた瞳で神流を一瞬だけ見ると、何も言わずに部屋へと消えて行ってしまった。うなじをさする夜卜と、俯く神流が暗い廊下に取り残され、外で風は強く吹き続ける。
「今夜も時化てやがる…」