第4章 幸せのありか
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「悪かったなぁ。これ、今回の迷惑料だ。」
財布から五円を出し、夜卜に渡す。
「毎度ありー!じゃっ!」
雪音の肩に腕を回し背を向けた夜卜に、小福は手を振った。
「ばいばーい。ひよりんもまた来てねー。」
「はい!」
外では雪音と夜卜の声が絶え間なく聞こえ、神流の笑い声も時折聞こえる。
「あの、さっきの話ですが…」
「ん?」
「夜卜が怖い神様って…あれ冗談ですよね?」
半ば冗談であってほしいという願いからか、悪い冗談を笑い飛ばしたいからか、どちらとも言えない笑みがひよりの顔にはあった。
「本当よ。夜卜ちゃん、昔神器を来たことがあるの。はじめて夜卜ちゃんのこと知ったのも悪い噂からだったよ。それに夜卜ちゃんは武神でもあるから…人切りもするんだよ。」
冷や汗が流れおちるのがわかった。予想もしていなかった言葉だった。
「人…切り…」
にやにやと笑いながらひよりの前で飛びかかろうと身構える小福の頭に、大黒の投げた煙草の箱が当たる。
「昔だ昔!切るとか切られるとかそんな時代だった話。」
「それってどういうことですか?」
思わず座りこんだひよりの横で、いつの間にそこにいたのか、ふすまに背を預け神流がそこに座っていて、外を見ていた。顔が影になりどんな表情をしているか分からないが、聞こえた声は淡々としてそして、無情に聞こえた。
「神っていうのは、人の願いがあってこそ存在できる。名の知れた神は願い慕われ続ける。だけど、無名の神は…違う。人の記憶にすら、留まる事が出来ない。忘れられないためにはどうするか…願われたら何でもする。それが誰かの願いなら…」