第4章 幸せのありか
「気をつけてね~。夜卜ちゃんのこと知ったの、悪い噂からだったもーん。」
小福を振り返ると、何でもないような顔でこちらを見ていた。倒れていたひよりもその言葉に身を起こす。
「悪い噂…?」
「夜卜ちゃん、ああ見えてこわーい神様なんだよ~。」
驚いて小福を凝視する雪音を横目で見ると大黒が諭すように言った。
「小福―、ビビらせんなよ。」
決してビビらせているつもりはないのだろう。あくまで、知っておいたほうがいいということである。しかし、現実とはかけ離れた小福のいう夜卜に、ひよりと雪音は驚きを隠せなかった。
「グッドニュース!!仕事の依頼だ!!いくぞ、雪音!!」
「ちょっと!置いていかないでーー!!」
空気の読めないタイミングで現れた夜卜は雪音を掴むと疾風の如く駈け出して行った。そのあとをひよりも続いて行った。
「お邪魔しました!!」
「えぇ~!!ひよりんもう行っちゃうの~??」
不満げに三人が出て行った後を見つめる小福の後ろで大黒は煙草の煙を吐くと、少しばかり厳しい顔つきで前を睨みつけた。
「…なぁ、神流。…なんで、あいつはあの二人を連れてきた?」
「知らない。私も付いてきただけ。夜卜なりの考えがあるんだろうけど…」
神流はそこまで言うと口を閉じた。いきなり口を閉じ俯いた神流からは、ただならぬ何かがそこにあることを思わせた。