第3章 招かれた厄災
急な出来事にひよりは息をのんだ。彼はゆっくり歩き出し、踏切の中に方足を踏み入れた。
「ダメだ!間にあわない!」
「うっせぇ!!」
慌てる雪音に一発喝を入れるべく大声を張り上げる。走る電車の上、夜卜は一気に走り出した。
「豊葦原中国 荒らび足らせぬ禍の者よ
我 夜ト神来たり降り 雪器を以て砕き伏せ
種々の障り穢れを打ち払わん!」
電車は止まることを知らない神流はゆっくり立ち上がると、電車のすぐ端まで行き、そこに腰を下ろした。後ろではひよりに黄金がぴったりと付き添っている。
「斬!」
夜卜が妖の指を切りおとすと、それは綺麗に消えてなくなった。が、妖ではなく、踏切のバー、木、フェンスなどその場に会った物が綺麗に切れた。思わず目を見張る。
神器で此処まで切れるとは想像以上だ。
そんなことを思っていると、先ほど切れた大木が線路側へ倒れてきている。
「璃寛。」
右手現れた鞭を振り、大木を反対へと押しやる。
「漆黒。」
左手に持った拳銃を一発撃ち、肩に担ぐようにして満足げにひよりを振り返る。
「ついでに一匹斬。」
ひよりは突然拳銃を発砲したため、小さくなって縮こまっていた。夜卜が線路の片側に着地したのを見ると、黄金にひよりを乗せ、自分もまたがり電車から降りた。
踏切が開けると、真喩が静かに頭を下げそして帰っていった。