第3章 招かれた厄災
思いもよらぬ言葉に目を丸くするひよりと真喩。真喩はとたんにしかめっ面になる。
「相変わらずなんと言うクズ!」
踏切が鳴り出し、赤いランプが点滅する。拳を握りしめてひよりが一歩前に出た。
「あの、今の言い方はないんじゃないですか。」
「自殺するような魂は既に魔に取りつかれてっから、神器にもなれねぇ。もう死んだ奴もまだ生きてる奴も救いようがない。
「そ、そんな!それがあなたの仕事でしょ!?」
電車が後ろを通り、強い風と騒音が皆を囲む。夜卜の目は変わることはなかった。ひよりは高く飛ぶと、電車を超え電車が通り過ぎた後は姿を消していた。
「さ、帰んべ。」
頭の後ろに手を組み、神流に向かって今夜は泊めてくれといいながら背を向ける。真喩は少し駆けると夜卜の肩を掴んだ。
「お待ち!バイ菌!」
「いいのかよ、一人で行かせて。(あいつ、本当に…)」
「今回は責任持たないぞ。」
神流も頭を掻きながらこの件はノータッチだと言わんばかりに背中を見つめる。夜卜はこういった。
「雪音、初仕事だ。」
「俺は何をすれば?」
「…器を呼んだら来い。名を呼んだら戻れ。今はそれでいい。」
さっさと歩きだした夜卜。神流は雪音の頭に手を乗せると真喩と目を合わせ不安げに表情を曇らせた。
「雪音、一人?なんなら、連れて行ってもいいよ。私の神器。」
「でも…いいよ、俺一人で。」
「一人が好き?」
そう問うと、雪音は目を伏せ返事に困ったのか神流を振りほどくと歩き出した。