第3章 招かれた厄災
「違う。俺たちは見えないんじゃなくて、目にとまりにくいの。実際には見えてる。」
「ふーん。」
「逆に聞くが、ここのウェイトレスは何人いた?おっと、見んなよ。」
「えっと…二人?」
そう答えたひよりが、店内に顔を向けると
「あれ?四人?」
「そういうこと。俺と雪音と神流はお前が見落とした二人のように、背景扱いなのさ。一度認識されるとヒトとして共有されるが、またすぐ忘れられる。」
「大変失礼いたしました!」
謝りながら、神流達の前に水が置かれる。
「ひよりだって、今まで街ですれ違った人間全て覚えちゃいねぇだろ。…俺たちは彼岸の住人だからなおさらな。」
「彼岸と此岸。ホントは表面を撫でるだけでバランスが取れてる。関わりすぎると…崩れる。」
頬杖をついてそうつぶやく神流。周りを漂う暗い雰囲気を変えようと、ひよりと雪音に笑いかけた。
「ま、そう気に病むことはないさ。此処で会うのも、何かの縁だしな!」
「縁…」
「そう!縁!」
少し表情が明るくなったひより。すると、夜卜の嫌そうな声が神流にぶつかった。
「お前、一体どうしたんだ?キャラ替えかなんかしたのかよ。」
「何が?」
「いいから、やめろそれ。気持ち悪い…」
大げさに顔をしかめる夜卜に、神流は腕を組むとそっぽを向いた。