第6章
紅葉との電話を終えて居間に戻ると台所の方からは何やらカタカタと陶器同士がぶつかり合う音が聞こえて紫呉と二人台所を覗き込む。
するとそこには制服から着替えた夾が1人用の土鍋を使って透のためのおかゆを作っていた。
「え、うっそ、何、何やってるの夾君?」
「見てわかんねえのかよ」
「透君のおかゆ作ってあげてるの?」
この家にやってきてからまだまだ短いものの、夾が料理できるなんて事を知らなかった#NAME1#は意外そうに夾の背中を見つめていた。
「病人に飯作らすわけに行かねえだろ」
夾の言葉に納得した#NAME1#は一定のリズムでカタカタと音を立てる土鍋の蓋に目を向けると紫呉も何を考えているのかそれ以上は何も言わない。
その間が夾は紫呉に揶揄われていると気付けば、顔を赤くして紫呉の胸倉を掴んだ。
「何だよ!文句あんのかよ!」
「なーんも言ってないでしょ?
ちなみに僕らの夕飯は?」
「ないに決まってんだろ!」
出来上がったおかゆを土鍋ごとおぼんに乗せると閉まっていた廊下に続く扉を蹴破って出て行った夾。
「家壊したら罰金だよー?」
「大体何で俺がこんな事しなきゃなんねえんだ」
去り行く夾の口から洩れる文句と同じ形をしているけれど、不器用な夾の照れ隠しの言葉に台所に残された紫呉と#NAME1#は笑みを零した。
「初々しいったらないねえ」
「そうだねえ」
そのまま紫呉と2人夾が蹴破った扉に大きな破損がないのを確認した後一緒に直せば、紫呉はまた電話台の方へと向かっていった。
今度は何処へかけるかと言えば、それは草摩専属の医師でもあるはとりなのだろうと大体察している#NAME1#は今夜は何処の出前を取るか考え始めるのであった。