第6章
「良かった。じゃあ取り敢えず、これ。
追試対策の問題、纏めてみたんだ。これをやればきっと大丈夫だと思うんだ」
夕方、生徒会の活動を終えて帰ってきた由希が夕飯まで部屋から出てこなかったのはこれだったのかと内心1人で納得する。
「だから、元気になったら一緒にやってみよう?」
「ありがとうございます…!」
夾が家の近くで倒れた透を慌てて連れて帰ってきた時は風邪という理由以外に何処か罰が悪そうにしていたけれど、今はそんなことなかったくらい元気になったことに安堵した。
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透が風邪を引いた後日、この日は雨とその湿気でじめじめとした嫌に暑い日。
寅の物の怪は水嫌いではないものの、ネコ科の運命としては雨は苦手である。こうも道が濡れていると外に出る気も起きずに#NAME1#は一日家でゴロゴロすることとなっていた。
「午後から少し止むって言ってたけど、少しだけじゃ何もできないなぁ…」
不意に玄関のチャイムが鳴る。
「はいはーい、何でしょう…って楽羅!」
「ひおちゃん!お久しぶり、もう会いたかったんだからね!」
楽羅の突然の来訪に驚きながらも、嫌がることなくその抱擁を受ける。
「夾に会いに来たの?」
「そうなの!夾君いる?」
「まだ学校だけど、そろそろ帰ってくるんじゃない?
帰ってくるまで家で待ってたらいいよ」
楽羅は夾の事になると歯止めが利かなくなる節がある。けどだからといって追い返す理由にもならないし、夾が帰ってくるまでは大人しい普通の女の子であるわけだし、そもそも#NAME1#と楽羅は小さい時から年も近い事もあり仲がいい。それ故この後夾とこの家の玄関の戸1枚が大変なことになることも知らなければ気にする事もなく、客人用の湯飲みにお茶を用意し高校生組3人が帰宅するまで、2人でプチ女子会を開くのであった。