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根無し草【フルーツバスケット】

第6章    




爽やかな夏とは縁遠い日本の夏、その夏もまだまだ続くと思うと憂鬱な気分になる。しかし今この草摩紫呉の家には草摩ではない居候、本田透が風邪を引いたことで僅かながら慌ただしそうにしていた。


「38.2℃…透君の病名は、風邪だね!」

「わかってんだよ、そんな事は。良いから寝ろさっさと」


大人の余裕というより、そもそも紫呉の性格はこうであると体温計を見ながら苦笑いする灯桜とふざける紫呉の様子に呆れ気味にする夾。


「大丈夫です、薬を飲めばすぐ治るです」

「良いから寝ろ!他人の風邪は気にする癖に、何で自分の風邪には無頓着なんだ」


風邪による発熱で頬を仄かに赤くしながらもこの家の家事をしようとする透に不満を露わに夾は顔を近づけ寝ろと言った。


「で、ですがあの…お夕飯の買い出しもまだですし、今日はバイトもありまして…!」

「透君、透君。今日は全部オフ、休み。
 大人しく寝るに限りますよ」

「そうそう。こういうのはぐれ兄に任せとくと何でも解決しちゃうから。
 透君は何も気負わずゆっくりお休みして、ね?」


年上2人からこうも言われてしまえば、弱々しくはいと返ってくる返事に#NAME1#は1つ頷いて透を部屋へと向かわせた。


「バイトって紅葉のお父さんの会社の清掃、だったっけ」

「そうそう、だからこういう時は…」


静かに立ち上がり廊下へ出る紫呉の後をついていけば、玄関付近にある電話代の前に立ちその受話器を取る。この時代にしては珍しい黒電話のダイヤルを回す紫呉が何処へかけるのかは容易に想像が出来て納得すれば電話の受信先が出る事を待った。


「…あ、もしもしもみっち?突然で悪いんだけど、今日透君が風邪を引いちゃってn…」

『えーーー!!!透風邪なの!?大丈夫なの!?ちゃんと寝てるの!?』


数コールもかからず出た受信先は透の雇用主の息子の紅葉。
紫呉が事情を話した次の瞬間驚きと心配から受話器から可愛らしい声が漏れる程の大きな声が響き渡った。


「寝かせるためにバイトをお休みさせるんだよ、つまり今日はそっちに行かないという事」

『はっ…そうか!わかった、うん!任せといてー!』


何やら考えがあるのか一方的に切られた電話に何が任せといてなのか、と不思議そうに#NAME1#と紫呉と二人顔を合わせた。





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