• テキストサイズ

根無し草【フルーツバスケット】

第6章    




夜、夕飯が食べ終わってから暫くした頃白衣を着たはとりとバイトの終わった紅葉が紫呉の家を訪ねて来た。理由は言わずもがなである。病人である透の部屋には透と#NAME1#、紅葉、はとりの四人。はとりの手には注射が握られていて、それを紅葉が心配そうに見つめる。


「間違えないでねハリィ、透が痛がったらすぐ辞めてね」

「大丈夫ですよ、全然痛くないですよ!」


笑顔を1ミリたりとも崩す事なく注射を受ける透に、でもでもと紅葉は続けた。


「しーちゃんは痛いって言ってたよ!
 すごくすごく痛いって、何回も何回も打ち間違えるんだって!」

「あれはわざとやったんだ」


わざとというはとりの言葉に笑いをそうになるのを堪えていると、透の部屋の扉がバンと大きな音を立てて開く。そこにはわざとらしく涙を浮かべた紫呉の姿があり、それにすら驚かないはとりのこの状態が大人の余裕なのだろうと悟った。


「はーさん酷いよ、わざとだなんて…!
 何となく気付いてたけどね」

「ギャーギャー文句を言うお前が悪い。
 騒ぐだけなら出ていけ、病人の体に障る」


それだけ言うと紫呉と紅葉を部屋から追い出し、医療器具を医療鞄の中にしまう。


「つーれなーい、はーさーん!」

「つーれなーい、ハリィー!」


部屋の外からは追い出された紫呉と紅葉のかーなしー!という声が聞こえて透と笑みを零す。帰り支度の済んだはとりが扉の方を向いたまま口を開く。


「暖かくして寝ろ」

「あ、あのはとりさん。薬代を…」


透に呼ばれて振り返ったはとりは、要件を聞くなり微笑んだ。


「早く元気になるんだな。君が床に伏していると、どうも落ち着かない奴が多いらしいからな。
 何かあったら呼べ」

「…とり兄も、落ち着かないのかな」


はとりが透の部屋を去った後、#NAME1#は出ていく前のはとりの言葉を思い出した。するとコンコンと扉を叩く音が聞こえ、はとりが忘れ物でもしたのかと有り得ないことを考えていると、透がはいと答え扉を開けて入ってきたのはノートを持った由希だった。


「今、大丈夫?」

「は、はい、もちろんです!」

「はとり何だって?」

「そんなに酷くないからすぐ回復するだろうって」


透の言葉に安心したように由希は微笑めば、手に持っていたノートを渡した。



/ 40ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp