第5章
「ここ、公園じゃん」
子供達が遊ぶワイワイとした賑やかな声と蝉の鳴き声が響くここは不服そうな表情を浮かべた燈路の言う通り公園。
「はい、公園です!」
「あのさ、何でこんなにしみったれた所を選ぶわけ?その頭には映画とか遊園地とかインプットされてないわけ?」
「ひーろちゃーん、透君今はお金がないって言ってたでしょ?
それに私、公園て好きだよ」
灯桜が燈路の目を見て微笑めば燈路は顔を背けて小さく許してやると呟けば、灯桜の横で不安そうな顔をしていた透は安堵したように感謝を述べた。
そんな透がふと周りを見渡すと、その視界に移動販売のクレープ屋が来ているのが映り一気に目を輝かせる。
「あっ、クレープ屋さんですよ!お2人とも食べますか?」
「灯桜、食べる?」
移動販売の車からは風によって甘くていい香りが運ばれてくる。灯桜は自然に口元を綻ばせ透と燈路の言葉に頷いた。
「うん、食べたい」
「では買ってきますね!」
「俺、チョコのやつ。灯桜は?」
「イチゴ…あ、でも…」
苺と一度は答えた物の、でもと頭の中でもう1つのメニューにするべきか葛藤を繰り広げる。
「何かお迷いですか?」
「…バナナも良いなって思って…」
「では半分こしましょう!」
透の提案に嬉しそうに うん、と答えると駆け足で透はクレープの移動販売の車の方へと向かっていった。
透が戻ってくるのを待ちながら公園のベンチに燈路と2人並んで腰かけていると、何か思い立ったように燈路が立ち上がった。
「燈路?」
「…クレープ、バカ女1人で3個も持てるわけないだろうし、手伝ってくる」
「私も行こうか?」
「いい。灯桜はここで待ってて」
燈路の言葉に透に聞きたいことがあるのかもしれないと、何かを察した灯桜は快く燈路を送り出す。移動販売の車の前で鞄から財布を取り出した透に後ろから膝カックンを決める燈路に苦笑いを漏らしながらも2人の後ろ姿を見つめる。
2人が何を話しているか知ることはできないけれど、しばらくして灯桜と自分の分を持って戻ってきた燈路の顔は何処か嬉しそうで。
「燈路、どうしたの?何か嬉しい事、あった?」
小学6年生とは思えないくらいの大人びた笑顔で頷いて、秘密と呟いた。