第5章
学校も大抵の会社も休みになる土日。
燈路が透に会いに来た日から数日、紫呉の家には燈路が遊びに来ていた。
『ふっふっふ、私のパワーが恐ろしいか?アリよ!
だがしーかしー!こんな私も家に戻れば尻に敷かれたカカア天下だー!』
「じゃあ何、カカア天下じゃなくなったら敵やめるわけ?
アンタに甲斐性がないだけとかは考えないわけ?そもそもそのセリフに何の意味があるわけ」
灯桜の隣に座って透が淹れた紅茶を片手にテレビに映る"モゲ太とアリ"の敵キャラに向かって毒を吐く燈路。
「アニメくらい素直に見ようよ、ひー君」
「ほら、なくなったらすぐにおかわり注ぎなよ。
それとも何?これ以上俺にお茶を飲ませたくないわけ?」
「じゃあお姉ちゃんが淹れてあげよう」
透の前に置かれたティーポットを取ると燈路のティーカップにおかわりを注いでいく。
「女の子には優しくしないと、せっかくの綺麗な顔が台無しだよ?」
「何それ。というか、ボケ女も何ぼーっと見てるのさ
やだやだ労りの精神を持ち合わせてない人間は…」
「おい、燈路。勘違いすんな、そいつはてめえの小間使いでもなんかじゃねえぞ。人んちに上がり込んどいて偉そうな口利きやがって」
燈路の言葉にはっとしたように謝る透、けれど丁度2階から降りてきたらしい夾の耳にも聞こえていたようで燈路に説教を始めた。
「はぁ?何それ、いつからここは猫が主の家になったわけ?
一端の文句が言えるくらい何かに貢献してるわけ?やだやだ、何の責任も果たしてない癖に文句だけ多いやつって」
夾の説教にも動じず、寧ろ反撃を始めた燈路に夾は脳内で拳を握る。
「問題提起なら鼻垂らしたガキにもできんだよ」
殴り飛ばしたいとこめかみに青筋を立てた夾が、燈路のとどめの一撃でとうとう殴りかかろうと前に踏み出す。しかし紫呉が止めに入ったため夾の拳が燈路に届くことはなかった。
「はい、ストップ。ストップよ夾ちゃん!
ひー君は今、反抗期ってやつなんだよ」
「はぁ!?反抗期だか何だかしんねぇけどイチャつくなら草摩の家ですりゃいいだろ!」
夾のその一言にうーんと紫呉は唸ると、そうも簡単に行かないのよと言葉を続けた。