第5章
反抗期のせいで素直になれない燈路に紅葉が揶揄うように口を開く。
「燈路無茶言ってるー」
「うるさいよウサギ!
…それは灯桜が大変な時何もしてやれなかったけど…だけど俺だって、灯桜の事…すごく、すごく心配して…」
頬を微かに桃色に染めた燈路は再び顔をぶ俯かせてしまう。
そんな中夾は燈路の気持ちが何なのか理解できていないらしく怪訝そうに眉を顰める。
「何が何だってんだ?」
「夾は鈍感すぎ。燈路は透に焼きもち焼いてたんだよ。
背伸びしても燈路は小学6年生だもん。不器用なのね!」
「…ごめんね燈路、気付いてあげられなくて…
今度は一緒に見よう?」
燈路の手を取って謝る灯桜に未だ目を合わせようとしないけれど、それ以上言葉の追撃をしない燈路に、安心したような、けれど少し申し訳なさそうに眉を下げ笑う。
「差し詰め私は恋のライバルだったのですね!」
「透はつらい立場ね」
微笑ましそうに灯桜と燈路を見つめる透と紅葉に未だに何が何だか理解できない夾は、はぁ?と声を漏らす。
「でも燈路、透君にもちゃんと謝って?」
「そうだよ燈路、透今日はバイトなのに遅刻だよ!」
灯桜と紅葉の言葉に不満そうにしつつも自分に非があると理解している燈路は罰が悪そうに顔を背ける。
そんな燈路に透は、いいえ、許しません!と歩み寄る。
「燈路さんには罰を受けてもらいます!」
「何さそれ、何をさせる気なわけ?」
これから何をさせられるのかわからない燈路に透はじりじりと距離を詰めると燈路に抱き着いた。
「抱きしめの刑、です!」
「あほ、それのどこが罰だってんだ」
「ふふ、燈路が何年かずっと気になってたのね!」
ボンっという音と辺りに煙が漂い女性である透に抱き着かれた燈路はその姿を未へと変える。
未の姿になった燈路は突然の事に驚き顔を青くさせ足も震えていた。
「改めまして、よろしくお願いしますです!燈路さん」