第5章
由希と一緒に家に帰った後5人で透と一緒に包んだ餃子を食べた。その後紫呉は執筆のため、夾は筋トレをするためと自室に戻ってしまい、居間には灯桜と透と由希の3人。
『くっそお、なんて手強い敵なんだ…!』
『ふっふっふ、私のパワーが恐ろしいか?アリよ!
だがしーかしー!こんな私も家に戻れば尻に敷かれたカカア天下だー!』
『うわぁ!なんて大人げない敵なんだ、家庭のストレスをぶつけてくるなんてー!』
『モゲター!』
テレビから聞こえてくるのは燈路に借りたアニメ『モゲ太とアリ』のキャラクターの声。
「敵の方にも色々な事情があるのですね…ですが、妻の方にも何か思うところが、ですし、難しい問題です…」
「家庭の複雑な事情に、もし2人の間に子供がいるのなら巻き込まれてないといいけど…」
透と灯桜が真剣な言葉を漏らす中、由希は心の中でこのアニメ作品自体が問題ではとツッコむ。
すると居間の隣の部屋、つまりは紫呉の部屋の襖が開き中からは執筆をすると言っていたはずの紫呉が欠伸をしながら出てきた。
「おはよー…」
「紫呉、もう夜よ。生活リズムを少しは整えたら。
それに、執筆してたんじゃなかったの」
「整えなくても許されるから物書きになったんだよー」
由希の言葉に開き直ったかのように笑う紫呉は灯桜を見ると、おんやー?と不思議そうにする。
「ひおちゃんによく似た子がいるねぇ。
おじちゃんがお菓子買ってあげようか」
「寝ぼけてるの?それとも質の悪いおやじギャグのつもりなの」
「私後1年しない内に成人するんだけどな…」
紫呉に対し由希の凍えるくらいの冷えたツッコみにわざとらしく涙を流しながら灯桜を抱きしめる紫呉。
「ぐっすん…由希君は今日も冷たいのでございます…」
「離してあげなよ、下劣菌が伝染るから」
由希君冷たい…と相変わらず偽りの涙を流しながらも灯桜を開放する。
「それよりぐれ兄、寝てたんなら何も書いてないんでしょ。
みっちゃん、また首吊る準備始めちゃうから書いてあげなよ」
「ひおちゃんもつれないなぁ…なーんて。元々そのつもりだから安心しなさいな」
よいしょと紫呉は立ち上がると台所へ行って珈琲を淹れると再び自室へと今度こそ執筆のため消えていった。