第5章
燈路の家から門まで歩く中肩に掛けたキーボードが重くて何度か立ち止まる。
「あら、灯桜ちゃん?」
「おじさん、とおばさん…こんにちは」
燈路や少し嫌だけど慊人に会うならまだしも、産みの親と会うと思わなかった灯桜は口をどもらせる。
けれど2人の横にもう1人自分より小さな男の子の姿が目に入ると、その男の子の方へ視線を向けた。
「その子は…?」
「あ、まだ会った事なかったかしら、息子です。
ほら、挨拶なさい」
その声で2人の前に出た男の子は初めて会う灯桜に人見知りをしているのか視線を彷徨わせながらも口を開いた。
「風真、草摩風真…です」
「風真君か、私は灯桜。今いくつ?」
「10歳」
「そっか」
自分の知らぬ内に10個も離れた弟が生まれていて、姉と名乗るつもりもないが、複雑な感情を抱く。その上これ以上何を話せば良いのかも思い浮かばなければ、何処か気まずさを覚える。
「…あ、とり兄。どうしたのこんなとこで」
視線を彷徨わせながら必死に何を話すか考えていれば正面から夏にも関わらずスーツに袖を通した辰憑きのはとりが歩いて来るのが見え思わず声をかければ、灯桜と#NAME1#の産みの両親が一緒にいるのを視界に捉えたはとりはすぐさま状況を把握したようだった。
「どうしたの。じゃない、お前から用があるから門まで来いと呼んだくせに、こんなとこで油を売っていたのか」
え?と理解できないでいる灯桜にはとりは行くぞとだけ告げ手を掴むと門の方まで連れて行った。
「初めて会ったのだろう。弟と」
「え?…あー、うん。でも当たり前の事だよね、子供が欲しかったのは確かだし
ありがと、とり兄。正直少し困ってたから助かった、それじゃあね」
「あぁ。気を付けて帰れよ」
はとりに手を振ると元来た道を歩いて帰る。
相変わらず肩に掛かるキーボードは重く、時折立ち止まって休憩をして帰れば、家に辿り着く頃には太陽はその姿を真紅に染めていた。