第4章
「見つけられるかな…こんな私でも」
弱々しくも何かを、幸せを願う利津の声。
「いつか見つかると良いな、できる事なら私もやっぱり誰かのためが…いいな…」
私にもできるだろうか。親に嫌われた私でも、誰かと会うために生まれてきたのだと言う事は出来るだろうか。
高望みかもしれないけれど、願う事なら彼と会うために生まれてきたのだと言えたのなら────。
「ん…んん………っは!」
「みっちゃんさん!」
「大丈夫ですか!」
何とか利津が屋根から飛び降りようとするのを阻止し、居間に戻り気を失ったままの満の看病をしていると日が暮れる頃漸く目を覚ました。
「原稿は!」
「今書き直してますよー」
自室で眼鏡をかけて机と向き合う紫呉に安堵の涙を流す。
「後1時間くらいで終わるから、たこ焼きでも買ってきてよ」
「わかりましたー!」
「もう暗いし、りっちゃん、ついてってあげて」
何を考えてるのか、たこ焼きを買いに行こうとする満のお供に利津をつけた紫呉。2人も顔を見合わせ不思議そうにしながらもたこ焼きを買いに2人は出かけて行った。
「あの2人、似てるよね。
弱気な性格とか、パニックを起こすとことか」
「そうだねぇ」
「今日一日あの2人で遊んだ謝罪を…なんて事ぐれ兄がするわけないか。
でもあの2人、お似合いだね。きっとそのうちくっつくんだろうね」
集中してるのか、それとも他の何かを考えてるのか、無言でペンを走らせる紫呉に灯桜もそれ以上の言葉は繋げない。
「ただいま帰りましたー!」
1時間もしない内に帰ってきた2人の顔は出掛けて行く前よりも明るい気がした。
そんな2人を置いて目の前でたこ焼きを頬張る紫呉。
「んーうまい!」
「…あのー先生、それで原稿は…」
満が原稿の話を切り出すと、紫呉は近くに座る透にたこ焼きを1つあーんと差し出す。その行動を見てまだ原稿が出来ていないのだと思った満は先生と涙声で叫ぶが出来ていないのではない、遊ばれているのだ…
実際先程まで近くに座って話していた灯桜は原稿が既に出来上がっている事を知っている。