第4章
「透君、あのね。つまり、りっちゃんは男なんだ。
でも昔から女装してるんだよね」
普段から女装している利津をずっと女性だと思い込んでいた透とぶつかり申の姿に変身した利津に透は頭が追い付かず目をぐるぐると回す。そんな透に利津の本当の性別を明かすと漸く頭の整理がついたのか落ち着きを取り戻す。
「でも、何故女装を?」
「落ち着くんです、女装してると…それこそ初めはほんのお試し程度だったですが、女装すると安心することに気付いてからは、辞められなくなってしまい…」
──楽羅ちゃん、灯桜ちゃん、このお洋服くれる?
──え?利津が着るの?
ふと幼い頃利津と亥憑きの楽羅と楽羅の家で自分たちの服を見せ合って遊んだ日の事を思い出す。今思えばあの時から利津は女装にハマっていった。
「すみません、こんな自分が恥ずかしいです…」
「いいじゃん、りっちゃん顔綺麗だから。
女装しても変じゃないよ」
「ひおちゃん、そのフォローもどんなもんかと…」
灯桜は素直な感想を述べたまでと首を傾げる。けれど、由希のでも…と続く声にその場の全員が由希に目を向ける。
「これから社会人になって女装して通勤するの?」
「…やっぱりダメですかね…?」
不安だと目尻に涙を浮かべる利津に夾が顔を背けて苦笑いを浮かべる。
「それより君たち、いつまでも制服じゃ難だし着替えてきたら?」
紫呉の言葉にそうだねと立ち上がり各々の部屋に着替えに行く高校生組三人を見送ると涙を浮かべていた利津が口を開く。
「紫呉兄さん、灯桜ちゃん、すみません…
先程頑張りますと宣言したのに、結局失態の嵐…」
しかし弱々しく言葉を紡ぐ利津の背後から何やら声が聞こえ利津も後ろを振り返る。
「タコせんせーーーーーーーー!!!!!!」
「っは…!りっちゃんそこ閉めて!早く!」
急かす紫呉の声に慌てて障子を閉める利津。坂の方から全力で玄関に走ってくるのは物書きである紫呉の担当であり、先程紫呉の嘘によってたこ野郎に向かうこととなった満だ。
「先生!いるんでしょう!さっさと出てきてくださーい!」
バシャっと玄関の戸が揺れる大きな音と共に紫呉に出てくるよう催促する満に利津が戸惑ったように紫呉に誰かと尋ねた。