第4章
「私は本当にりっちゃんさんとお会いしたかったのです!
だからこうして私に会いに来てくださったことがほんとに、本当に嬉しいんです!」
「ぐれ兄、透君のこういうところ、まねた方がいいよ」
「えー?」
まっすぐと素直に利津に会えて嬉しいと告げる透に利津は顔を上げて涙を拭うと嬉しそうに微笑む。
「やーしかし君は相変わらず母親に似てすぐパニックになるねー。もうすぐ社会人になるってのに」
「す、すみません…」
「りっちゃんだってもっとしっかりしなきゃーとか思ってるんでしょう?」
利津は心優しいけれど、母親の性格を濃く受け継いだようで良いところがネガティブに隠れてしまっている。灯桜もそれを知っているからか、話に横槍を入れる事はせずに耳を傾ける。
「も、もちろんです!もっと自分に自信が持てるようになりたい!…そしていつか綾兄さんのように自信に満ち溢れる人になれたらなぁって…」
「えっ、りっちゃん、ごめん。何も言わないつもりでいたけど綾兄のようには無理だよ」
横槍を入れないつもりでいた灯桜だが、利津が由希の実の兄であり紫呉と同い年で巳の物の怪憑きの綾女のようになりたいと言うから口出ししてしまった。
「え、ええ!?何で!叶わぬ夢だから!?」
「りっちゃんだから無理なんじゃなくて、綾兄の自信は次元を超えてるから、私たち凡人には難しい話なんだよね…」
「そうそう、アーヤの自信は人類の規格から外れたところにあるから。
ていうかりっちゃん、君はすぐに謝りすぎなんだよ」
弟の由希の落ち着いた性格とは違って、常にテンションが高い。利津や楽羅程年が近いわけでもなければ紫呉のようにこうして毎日会話をするわけではないけれど、草摩の中で紫呉や辰のはとりと絡んでいるところを見ていた限りでは紫呉の言葉同様綾女は規格外の自信に満ち溢れた人間である。
そのことを紫呉と灯桜が利津に教えればがっかりしたようでまた顔が俯きがちになってしまう。
「そうだな…これから由希と夾が帰ってくるだろうし、まずは2人と会っても謝らないようにするのはどう?」
「お、ひおちゃんそれ名案だよ!透君も応援してくれるよね!」
「えっ?は、はい!」
「…わ、私チャレンジさせていただきます!」
こうして利津の謝罪禁止イベントは始まった。