第4章
「それにしても珍しいね、りっちゃんが会いに来てくれると思わなかった。嬉しい」
「うんうん、弱気なりっちゃんから訪問してくるなんてね」
「あ、はいすみません…あの…先程は透さんに大変ご迷惑を…」
利津を居間に通すと、透が台所でお茶を淹れてそれを利津に出す。
「いいえ、そんな全然です!お会いできて感激です!」
灯桜は今この瞬間も透が利津を女性と信じて疑っていないのだと透の顔を見て確信する。紫呉ほどではないけれど、灯桜も後で面白い事が起こると期待しているのだ。
「でも、何で急に来たの?」
「あの、やっぱりご迷惑でしたか…!?」
不安げに問う利津に紫呉は悪戯で うん、と笑顔で言えば、振袖を着ているにも拘らずごめんなさい、今すぐ帰りますと走って家を出ていこうとする利津の袖を紫呉が摘まむ。
「で、何で急に?」
「ぐれ兄聞かなくても察してあげなよ、りっちゃんは他の十二支が透君と会ってるから、自分も会わないと失礼になるかもって思ったんだよね?」
「う、うん…ありがとう#NAME1#ちゃん」
灯桜の言葉に緊張していた利津も柔らかな笑みで感謝をする。そして透の方に体を向けると丁寧に自己紹介をしてお辞儀をすると。つまらないものですが。と自身の隣に置いてあったお土産を机の上に差し出した。
「本…?果物の…?」
「果物にしようとと思ったのですが、皆さんのお好みがわからなかったので果物の本にしてみました」
積み重ねられた5冊ほどの大中小それぞれの大きさの本はどれも果物の絵が描かれており、確かにここにいる紫呉と透の好みの果物を灯桜も知らない。
「…え、え、すみません。ダメでしたか?ご迷惑でしたか…?」
「いやー、ぜんっぜん」
無反応の紫呉に不安になったのか利津が紫呉の顔を見れば紫呉の顔は至って笑顔であるが、そのこめかみには青筋が立っているのが見え、またしても謝ると今すぐ果物を買いに行こうと振袖なのも気にせず走ろうとする利津の袖を紫呉がつかむ。
「デジャヴ…?」
そんな利津に紫呉は嘘と告げるとしくしくと自分はここに来るべきではなかったのだと机に顔を伏せる利津に果物の本を見ながら呑気に見ながら そんなことないってという紫呉に今日何度目かわからない溜息をついたのだった。