第3章
潑春と紫呉と灯桜の3人が話していると小さく丸まって寝ていた紅葉がんん…と小さく唸った後に眠たげな瞼を擦って体を起こす。
「Was...?」
「紅葉、起きた?もう起きないと流石に夜眠れなくなるよ」
「ひお…?」
#NAME1#は眠気でぼーっとしているのかドイツ語を発する紅葉の頭を撫でるとさっきまでの睡魔は何処へやら、ぱぁっと顔を明るくすると#NAME1#にぎゅっと抱き着いた。
「久しぶりー!」
「わっ…危ないって、私は良いけど紅葉が手に怪我したらヴァイオリン弾けなくなるよ」
灯桜に抱き着く紅葉の夢はヴァイオリニスト。そのため紅葉はよくヴァイオリンの先生の元へ通っていたりするのだ。灯桜はそんな紅葉の手を気遣いながらも注意すれば、反省したように腕の中でごめん、と謝ったため、灯桜は微笑んで頷くと頭を撫でた。
「ただいま帰りましたー!」
「おかえり、由希君、透君も」
「ただいま」
帰ってきて早々、今すぐお作りしますね!とスーパーのレジ袋の中から食材を取り出しながら笑顔でその場にいる全員に言う。しばらくすると台所からいい匂いが漂ってきて灯桜と一緒にテレビを見ていた潑春の腹が鳴る音が聞こえた。
「ふっ…春のお腹の虫が元気に泣いてる」
「きっと俺の腹の中には腹ペコ青虫がいるんだ…」
「そろそろ出来上がるだろうし手伝ってくる」
灯桜は立ち上がると台所に向かう。
「何すればいい?」
「では皆さんのご飯をよそってくださいますか?」
透の言葉に頷くと灯桜は食器棚から人数分のご飯茶碗を出すと1つ、また1つと炊けた米を持っては居間の机に運ぶと最後に透が運んできたおかずが盛られた皿で全てが揃う。
2階から夾を呼びに行った紅葉が夾を連れて降りてくれば、各々いただきますと手を合わせて晩御飯を食べる。