第3章
重かった荷物を灯桜が一人で運んだら、夕飯時を過ぎていたかもしれない。けれどその荷物を潑春が全て運んで帰れば、これから透と由希が買い物に行こうとしているところだった。
「潑春さん、灯桜さん!今お帰りになられたのですね、おかえりなさい!」
「ん…ただいま。本田さんと由希はこれから買い物?」
「そう、今日は春と紅葉が泊まるから本田さんだけじゃ重いんじゃないかと思って」
「そうなんだ、気を付けてね」
「はい、行って参りますね!」
潑春と灯桜と入れ違いに家を出た由希と透を見送ると灯桜の部屋に今日買った品々を置く。
「あれ、紅葉、寝てるんだ」
居間に行くと卯憑きの紅葉が座布団を二つに折りたたんで枕代わりにして寝ている。
「ほんとだ」
「お、春君とひおちゃんは一緒に帰宅?おかえり」
「ただいま、先生」
「うん」
部屋から顔を出しす紫呉は灯桜が潑春と一緒に帰宅した事に、途中で会ったの?と聞きながら自室の襖を閉じる。
「ひおがこれでもかってくらい大量に服を買って店を出てきた所に出くわしたから」
「何々?そんなに買ったの、いいねぇお金持ち」
「十二支なんだから生きてくのに困らないくらいのお小遣いが毎月入れられてるでしょ」
灯桜が辞めたとは言えまだ学生で、十二支と言う事もありバイト経験もないのに家具や大量の服が買えるのは十二支を子供に持つ親には莫大な養育費が支払われる。灯桜は親との縁が切れているため、灯桜本人の口座に支払われている。
「それよりひおちゃん、帰ってきたらまずは"ただいま"でしょう?
今はここがひおちゃんの家なんだから」
「…ただ、いま」
「はい、おかえり」
顔を背けてぎこちなくただいまと言う灯桜と満足そうに笑う紫呉、潑春もそんな灯桜を見て安心したのか嬉しいのか僅かに口角を上げた。