第3章
「ありがとうございました~」
両手に2つずつ紙袋を提げる灯桜。
買いすぎたと後悔しながら溜息をつき、近くのベンチに腰掛ける。
「ひお?…によく似た人?」
「春?」
「あ、やっぱ本物か。こんなとこで会うとか、やっぱり俺達運命の糸で結ばれてたんだ」
「春の思考は相変わらず飛躍してるよね」
「それほどでも…で、その大量の荷物は一体何」
白と黒の髪色をした春こと潑春は草摩の人間であり十二支の丑憑き。その潑春が言っているのは灯桜の両隣に置いてある荷物たちの事らしく、紙袋いっぱいに入った服を見て何があったのか察したようで、灯桜を見てはふっと笑う。
「春、笑ったでしょ」
「うん、だって何処探してもこんなに買う人いない」
「お金だけはいっぱいあるから」
はぁと溜息をもらして、両隣の荷物を見やる。
でもこれは確かに買いすぎだという自覚も灯桜にあり、親戚とは言え4つも年下に呆れられて笑われるとか、成人としてもやるせない。一応まだタグを切ってもらったわけでもないため、返してくるかと頭を悩ませていれば両隣にあった荷物が消えた。
「あれ」
「これ、先生の家まで運べばいいの」
「え、でも春、何か用事があったんじゃないの?」
「別に暇だったから、ぶらついてただけ…それに紅葉が今日はあの家に泊まるんだって意気込んでたから」
「そう、なんだ。でも全部持ってくれなくても」
「いいの、ひおは女の子、だから。
紅葉が女の子が重いものを持ってるときは変わってあげるのがカッコいい男だって言ってた」
「ふふ、何それ。じゃあカッコいい春にお願いするね」
灯桜には少し重すぎた荷物を軽々と持ち上げる潑春はやっぱり男の子だなぁと灯桜は考えながらショッピングモールを後にする。来た時はあんなに青かった空も、夕日の赤から藍色に染まろうとしていて日中とは違う涼やかな風が頬を撫でる。どれほどの時間をショッピングモールで過ごしていたのかを灯桜は自覚したのであった。