第12章 芽生えた感情
「……ん……」
未来が意識を取り戻すと、目の前には見知らぬ天井が広がっている
「お目覚めですか?姫様」
「…広良、様?」
「ここは安土城下の宿屋です。雨の中、高熱を出された姫様を僭越ながらこちらへ運ばせて頂きました。まだ熱が高いので、本日はこちらでお休み下さい。安土城へは連絡を入れましたので」
広良の話を聞いていると、朦朧とする意識が少しずつ戻ってきた
(雨の中、びしょ濡れになって熱を出しちゃったんだ…)
「すみません…、ご迷惑を…」
「とんでもございません。それにこちらこそ、元就様が失礼を致しました」
「…え?あ…いえ」
あの、全身で未来を拒絶し否定する元就を思い出すと、また軋むような胸の痛さが蘇る
そんな未来を見て、広良はいつもの穏やかな表情で話し始めた
「…元就様には口止めされていたのですが、実はこの宿まで姫様を運んだのは元就様なのです」
「……え。でも、あの人は家康様の御殿に…。それに…、私を運ぶなんてそんな…」
重度の潔癖症だと言うことを話しても良いものか、広良はそのことを知っているのか分からず濁した
「あのお方は幼少の頃、とても酷い仕打ちを受けました…。その頃の記憶のせいで、他者との触れ合いに強い嫌悪を感じてしまうようなのです」
「そんな……」
「私からはあまり申し上げられませんがーーーー」