第16章 垣間見える優しさ
しばらくすると、賑やかな声が聞こえてきた
「あれ…、ここってもしかして…」
「見たかったんだろ、堺の町」
何十軒もの店が立ち並ぶその通りは、安土とは違った賑やかさがあった
「わあ!良いんですか?」
「早めに用が済んだからな。信長へ報告するのに、お前が何も知らねェんじゃ辻褄が合わねェだろ」
理屈を並べる元就だったが、元就の優しさに触れられたようで嬉しい
「ふふ、それでもありがとうございます。すっごく嬉しいです!」
「……!」
喜ぶ未来の無邪気な笑顔は、初めて元就に向けられるものだった
「へェ…。笑うとそれなりなんだな」
「え?何か言いましたか?」
「いや、別に。お前、今の自分の立場忘れてねェか」
「もう、またそれですか。忘れてませんよ。今日は人質と奴隷で良いです」
「ああそうかよ」
「それより早く行きましょう!暗くなる前に回りきりたいです」
「おい、はしゃぎ過ぎてあんまり離れんじゃねェぞ」
小走りで先を歩く未来は、元就の言葉に振り返り、笑顔で早く来るように催促する
「お人好しなのは伝染すんのか?ったく…」
屈託なく喜びはしゃぐ未来を眺める元就は、心が軽くなるのを感じた
「そんなに喜ぶなら、さっさと連れてきてやれば良かったな」
自然と元就の表情も柔らかくなった