第12章 芽生えた感情
ドタ ドタ ドタ ドタ…ッ
廊下を乱暴に歩いて近づいてくる足音が、襖が閉められた部屋の前で止まったかと思うと、スパーーンッと無遠慮に開け放たれた
「…徳川家当主が直々に、なにか御用ですか?」
額を手で押さえ頭を支えていた元就は、ゆっくりと顔を上げ、そこに立ち構えている家康へゆるゆると視線を向けた
「お前…、一体未来になにをした」
鬼気迫る雰囲気を纏う家康の声は低く、怒りをあらわにする
なにも答えず、まだ本調子ではない元就はふらふらと立ち上がり、側に置いてあった羽織を手に取ると、元就は静かに家康の横を通り過ぎていく
「家康公。何か誤解をされているようですが、俺は何もしてませんよ」
すれ違い様、睨む家康と涼しい顔の元就
「あの子を傷つければ、許さないからな」
「肝に命じておきますよ、家康公」
それだけ言い残し、家康に背を向けた元就は、心底不機嫌な様子で御殿を後にした