第11章 拒絶
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「これでもう大丈夫だよ」
「本当にありがとうございました、家康様」
混乱する未来に声を掛けたのは家康だった
安土城から御殿へと戻る途中の家康と出くわし、事情を未来から聞いた家康は、自分の御殿が近いからと、元就を運び込んでくれたのだ
「こいつ、ちゃんとあんたを守ったみたいだね」
傷のせいで発熱した元就は、家康が煎じた薬を飲み、今は客間で眠りについている
「私がいけないんです…。私のせいでこんなことに…」
「あんたの的確な処置のおかけで、こいつは一命を取り留めたんだ。…まあ、あんたに毒を吸い出すなんて真似させたくはないんだけど…」
そう話す家康の真意に気付かず、未来は家康へ頭を下げた
「家康様に色々教わっておいて良かったです。ありがとうございます」
「ところで…」
「あ、はい」
顔を上げた未来に家康は聞いた
「なんでまたそんな山へ行ってたの?」
「え…。あ…、ええっと…」
家康は"松寿丸"が"毛利元就"だとは知らない
未来が考えあぐねていると、家康は未来の手首にそっと触れ、視線を落とした
「家康…様…?」
「秀吉さんから聞いたよ、安芸で攫われたって…。こんな痣まで作って、なにやってんの」
「すみません…」
「別に謝る必要はないけど…心配なんだよ、あんたが」
いつもの家康の雰囲気と違い、捕らえて離さないその瞳に見つめられ、未来は身体が動かない
「え…?」
「…いや、なんでもない」
今の会話をなかったことにするかの様に、家康は未来の手首をゆっくりと離した
「あんたは城に戻らないの?」
「私を庇ってこんな目に遭ったので…せめて今夜は付き添ってます…」
元就へ視線をやりながら未来は答えた
「…分かった。あんまり無理しないでよね」
「はい…。ありがとうございます、家康様」