第8章 故郷
少し思案して未来は口を開いた
「うーん、なんて説明したらいいのか難しいですが…。学問の勉強です」
「学問?」
「そうです。建築…えっと建物の勉強に」
「建物の勉強、ねェ…。こんな戦ばっかで形あるものは全部灰になっちまう世の中で、わざわざあんな遠くの地まで勉強に行くとは、お前の脳天気具合も底知れねェな」
馬鹿にしたような口ぶりで、未来の話を信じているのかどうかもよく分からない
「まあ、今は語学しか役に立ってないですけど…。あなたも異国に行くなら見たことありますよね、向こうの建物」
「まあな。材料一つにしても日ノ本にはない素材ばかりだが…」
「どんな素材があるんですか?」
自然といつもより明るい声で未来は、無意識にグッと身を乗り出し元就に尋ねる
興味津々と言わんばかりのキラキラした瞳で元就を見つめる未来は、まだ元就が見たことない未来の表情だった
(へェ。こんな顔もするのか、こいつ)