第8章 故郷
元就にとっては思いもよらない発言で、思わず間の抜けた声が出てしまった
「って言っても、もっと内陸の方で…まあ、なかなか辿り着けないところなんですけど…」
「…お前のことを調べさせても、安土に来るまでのことがさっぱりだったが…。いすぱにあに行くまでは、ずっと堺にいたのか?」
未来は少し驚いた
安土城下で"松寿丸"と初めて出会ったときに話したことを元就は覚えていたのだ
「…もしかして、あの時私に声かけたのも計画のうちだったんですか?」
未来は少し目を見張って尋ねた
「当たらずとも遠からずだな」
未来は元就をじっと見つめて次の言葉を待っている
「信長の寵姫が未来と言う名の小娘っつーことなら知っていたが、城下にお前がいたのを見つけたのは偶然だ。あんなところで、いすぱにあ語を流暢に話すやつがいるなんて珍しくて、気まぐれに声をかけたらお前が釣れたってわけだ」
煙を吐きながらニヤリとする元就
「釣れたって、人聞き悪い…」
「ところでお前はどうしていすぱにあに行ってたんだ?」
先程と表情がガラリと変わり、鋭い瞳が真っ直ぐ未来を見据える元就
(…どうしよう。この人に嘘をついてもきっとバレちゃいそうだな…)