第7章 病
元就は未来のそばに寄り、氷水で冷えた手拭いを未来へ手渡す
「手首はこれで冷やしとけ」
「あ、ありがとうございます…」
遠慮がちに受け取ると、指先が元就の手袋越しの指に触れてしまった
サッと瞬時に手を引っ込める元就の顔が強張っているように見えて違和感を感じたが、奴隷と触れ合いたくないのかもと未来は解釈した
「ごめんなさい…」
「…俺はあっちの部屋にいる。間違っても逃げようなんて…」
「思いません。それにこんなんじゃ無理ですし」
釘を刺そうとする元就の言葉を遮り、痣のある手をひらひらとさせて未来は逃げないという意思表示をした
「ならいい。奴隷らしく大人しく寝てろ」
元就はどこか急ぐ様にスーーッと襖を閉めた
それを見届けると未来は横になった
(…奴隷らしい寝方って、どんなの…?)
行燈の淡い灯火の中、天井をぼんやり眺めながら今日見た元就のことを思い返す未来
意地悪な笑顔
悪い顔で愉しそうにする元就
振りでも優しく微笑む顔
呼び捨てで呼ぶ声
(やだな…、どうしてあの人のことばっかり考えちゃうんだろ。奴隷扱いする敵なのに…)
思考をかき消すようにキツク目をつぶる