第6章 許嫁
茶屋を出てしばらく歩いたところで元就は後ろを確認し、未来から離れていった
「ふう……」
懐からシガーケースを取り出し、気怠そうに葉巻をふかし始めた
なにも話さない元就
さすがの元就も幼気な女の子を振っておいて、さすがに良心の呵責に…と思う気持ちと、
この人に限ってまさかそんなことはないか、と思う気持ちを持て余しながら、未来は大人しく元就の後をついていく
「お前、もうちっと演技できねェのかよ」
未来へ振り返る元就は、既にいつもの口の悪い元就に戻っていた
「おどおどしやがって。あんなんじゃ、あいつ騙せねェだろうが」
「…あなたの目は節穴ですか。あんな傷ついた顔してる女の子を目の前にして、少しは誠意ってものがないんですか?」
元就の思いやりのない物言いに未来は不快に感じた
「は?誠意?残念ながらそんなもん持ち合わせちゃいねェよ。邪魔くせェ」
心底面倒臭そうに言葉を吐き出した
(だめだ、全然話が通じない…。あの子には気の毒だけど、こんな人早く忘れた方があの子のためだ…)
「はあ…」
「奴隷がため息とは、一丁前だなァ?」
「いえ、なんだか本当に疲れました…。もう用は終わったんですよね?まだ船に戻らないんですか?」
「今日は船には戻らねェ。俺とお前はここから近くの宿に泊まる」
「え…っ⁉︎」