第6章 許嫁
堺港の近くにある茶屋に未来と元就はやってきた
大きな通り沿いにあるその茶屋は、行き交う人々をよく見渡すことができる
「その方とはここで待ち合わせなんですか?」
「いいや、今日はなんの約束も取り付けてねェ」
「………?」
その言葉に疑問を持った未来は、右隣に座る元就へ首をかしげる
「お前をわざわざ連れて行って、許嫁ですって紹介してみろ、それこそ角が立つ。この人通りの多い店に俺がいれば向こうも気づくだろ。そこにお前がいれば、自然と引き合わせることができる」
「…結構回りくどいことされるんですね」
「全くだ。こんな下らねェことに付き合ってんだ、次の取引が楽しみだぜ」
空を仰ぎ見る元就は目を細め薄く笑った
「身内の方を振っておいて、そのまま取引は続けられるものなんですか?」
「この計画はその取引相手から持ちかけられたものだ」
「え…っ、そうなんですね…」
「俺みてェなやつに可愛い妹はやりたくないとさ。だから、出来るだけ傷つけずに妹の興味を削げだと」
「なるほど…。確かに、お兄様の気持ちよく分かります」
「あ?」
未来を軽く睨む元就の視線から逃げるように、未来はお茶をすすった
「それより、いつ通るかもわからない相手ですよね?ずっとここにいるつもりですか?」
「そんな無駄なことするかよ。俺がここにいることはその取引相手に伝えてある。妹連れてそろそろ来る頃だろ。だから…」
突然顔を寄せる元就
「え……っ」