第6章 許嫁
その相手が今堺港に来ている情報を手に入れたので、こうしてここまで来たというわけだ
「あの、聞いてもいいですか?」
「手短にな」
「秀吉様たちは放っておいていいんですか?…私は誰かにさらわれたとしても、あなたまで居なくなったら…」
「やっぱり俺の心配してんのか?」
少し前を歩く元就は視線だけ未来へ向ける
「あなたに疑いの目が向けられたらいいのにと思ってます」
「くくくっ。俺はお前の行方を捜索し、数日後お前を連れて秀吉のところへ戻る。そうすれば、俺が疑われることもねェ。むしろ、あいつらは俺に感謝するだろうな。信長のお気に入りを探し出してきた俺を」
「…私が秀吉様たちにあなたのことを話さないと思ってるんですか?」
「お前の命は俺が握ってる。もちろん丸腰の秀吉たちも同じだ」
そう言って懐に忍ばせていた銃を手に取り、未来の額に銃口を当てる
「少しでもおかしな真似をすれば容赦はしねェ。その心づもりでいろ」
凄みのある低い声で未来を睨む元就
殺気は感じないし、指を引き金にかけていないのを見ると、銃を見せたのはいつでも殺せるという未来への牽制だった
「ことわるごとに銃を私に向けるのはやめて下さい」
顔を横へ向け銃口から逃げる未来
「自分の立場をわきまえてるならそれで良いだけの話だ。俺を煩わせるなよ、奴隷」
顔を寄せ、未来へ釘を刺す元就